INTRODUCTION

場所から空間へ
人格から没人格へ

コロナ禍における
「社会の自明性の崩壊」を見通す
宮台真司の最新評論

 宮台真司がリアルサウンド映画部にて連載中の「宮台真司の月刊映画時評」などに掲載した
映画評に大幅な加筆・再構成を行い、まったく新しい評論集として一冊の書籍に。

 『寝ても覚めても』、『万引き家族』、『A GHOST STORY』、『呪怨・呪いの家』など、
2011年から2020年に公開・配信された作品を中心に取り上げながら、コロナ禍における「社会の自明性の崩壊」を見通す評論集。

 さらに、『スパイの妻』黒沢清監督との対談、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』について、
ヒップホップミュージシャン・ダースレイダーと語った対談なども収録。
まえがきとして著された、30ページ超に及ぶ書き下ろしのアピチャッポン・ウィーラセタクン論も必見。

崩壊を加速させよ 「社会」が沈んで「世界」が浮上する

崩壊を加速させよ
「社会」が沈んで「世界」が浮上する

  • 著者:宮台真司
  • 発売日:2021年4月30日
  • ISBN:978-4-909852-09-0 C0074
  • 仕様:四六判/424ページ
  • 定価:2,970円(本体2,700円+税)
  • 出版社:株式会社blueprint
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Event

刊行を記念し、宮台真司とHip HopクルーDos Monosのトラックメイカー/ラッパーである荘子itのトークイベントが、リアルサウンド映画部のYouTubeチャンネルにて生配信が決定しました。

2021年5月29日19時スタート / アーカイブ公開中
YouTube配信URL:https://www.youtube.com/watch?v=83PBdporVb8

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Interview

宮台真司インタビュー

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TENET テネット

2020

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JAPAN

スパイの妻

2020

<閉ざされ>から<開かれ>へと向かう“黒沢流”の反復

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A GHOST STORY

2017

『アンチクライスト』に繋がる<森>の映画

このくだりを書きつつ僕は涙を拭う。涙の理由を僕は知っている。感情がなければ世界は単に叙事的に美しいだけだ。なのに、なぜ喜怒哀楽の感情を以て社会に叙情的に向き合うのか。 そこには慚愧の念を伴いつつ敢えて「捨てることで選択する」営みが確実にある。世界の方が優れているのに、それを捨てて不完全な社会を選ぶという倒錯だ。

アンダー・ザ・スキン 種の捕食

映画を含めたアートの目的は、19世紀の初期ロマン派によると「治らない傷」をつけること。娯楽=リ・クリエーションが、入浴してサッパリして仕事に戻るみたいに社会に戻らせるものだとすれば、アートは、本当はいつも社会を脅かしている世界を、寓意的に体験させることで、以前と同じようには社会を生きられなくさせます。謂わば「その瞬間」を刻み込むのです。 そうして傷を刻まれた存在として社会を生きることを強いる映画が、20年程前から目立つようになりました。だから僕は今世紀に入ってほどなく、それらを扱った映画評を連載し始めたのでした。連載は「オン・ザ・ブリッジ」と題され、副題は「社会から世界へ」でした。それが2冊の映画本になり、ここでの連載にも繋がりました。

A GHOST STORY/
ア・ゴースト・ストーリー

Column

世界はそもそもどうなっているか。だが世界はそもそも総ゆる全体だ。全体を示す芸術作品は世界に含まれる部分。部分が全体であるのは不可能。彼は次第に不可能性に打ちのめされる。そして彼のラストパフォーマンスは不可能の表現になる。だが否定神学(否定の積み重ねで肯定を暗に示す仕方)ではない。観客らはジーマの崩壊という紛れもない具体を通して、自分らは何も分かっていなかったという感覚の具体に打ちのめされて終わる。

宮台真司の『ジーマ・ブルー』評:『崩壊を加速させよ』で論じた奇蹟がそこにある
宮台真司