僕等はまだ美しい夢を見てる
ロストエイジ20年史
石井恵梨子 著作
2021年2月25日発売
地元・奈良を拠点に、独自の「居場所」を作ったバンドの軌跡
奈良在住のロックバンドがいる。とても不思議なバンドだ。サブスクリプション・サービスではまず探せない。CDショップに足を運んでも、全作品を見つけ出すことは不可能である。
〜中略〜
そして、そのボーカルは街の中古レコード屋の店主でもある。こちらは知らない人のほうが多いだろう。
〜中略〜
この中古レコード屋を訪れ、一緒に撮影した写真をSNSに上げたがる若手バンドが近年は多い。移動時間のロスをものともせず、この人に会いたかったとわざわざ奈良を訪れる人が増え続けている。もちろんバンドに限らず、音楽好きのリスナーの間でも。そうして、彼らは一様にこう言う。 俺たちのヒーロー! オルタナの神様! それは何か。このボーカリストは何者なのか。
著者 | 石井恵梨子 |
発売日 | 2021年2月25日(木) |
定価 | 2,750円(本体2,500円+税) |
装丁 | 184ページ |
ISBN-10 | 4909852158 |
ISBN-13 | 978-4-909852-15-1 |
発売元 | 株式会社blueprint |
「この夢の続きへ」
LOSTAGEとチャットモンチーは絡むことがほとんどなかったから、勝手に別々の時代を走ってると思い込んでいた。あの渦中にいた時代背景も含め、この本を読んで改めて同世代なんだと気づく。
「仲間を増やし続ける旅の物語」
この本で語られるのは、私も部分的に見ていた、LOSTAGEの日々。つまずき、もがいた先で、自分らしい音楽と生活を少しずつ手にしてゆく物語である。
「答えなき時代、正解のない荒野を歩む」
良いものさえ作っていれば、いつか誰かが見つけてくれるだろうという希望を捨てることはできないが、世界中で生み出され続ける無数の楽曲が日々ネット上に積み上げられて、そのなかで突き抜けることの難しさを思う。
「早くライブハウスで会いたい」
自分が好きになるアルバム(音源)は時間を忘れてあっという間に聞ける。あっという間に終わっている。本でもそういう感覚がある、というのを久しぶりに経験した。
「転ぼうとも人生は面白い」
この本は、奈良を拠点として全国に発信し続けているロストエイジというバンドの歴史本だけに留まらない。この本には、今のこの混沌とした世の中に生きている全ての人へのメッセージが込められている。
「ロックという概念の“原点”が綴られている」
冒頭からこの国のロックシーン最重要期のドキュメンタリーを綴ったり、要所要所で出てくる邦楽ロックの脈略や転換期の話などからもわかる通り、この本は単なるバンドストーリーだけではない、
「生活という言葉の意味を問う」
LOSTAGEは今年で20年になるバンドだ。きっとこの本にはその紆余曲折が、波乱万丈な歴史が記されているのだろうと考えていたのだが、予想は全く裏切られた。それはその苦悩に対する衝撃ではない。
「私自身もまだ美しい夢を見ている」
とても面白い本だ。LOSTAGEという素晴らしいバンドの紆余曲折を知ることができるだけではなく、これからの時代、バンドはどう活動していけばいいか、もっと言えば、私たちはどういう生き方をしていけばいいか、という提示としても受け取れると思う。